防災について考える
- 2025年5月19日
- 読了時間: 5分
社長が「防災グッズ買った?」
と突然言い出した。
そういえば私も昨日神戸まつりに行ったばかりで、震災の写真が展示されていた。
当時も実際肌で感じた災害だった。
同じ頃最近の地震ニュースを見て、「そろそろ本気で備えなあかん」と思い立ったらしい。
いつもは豪快で、“なんとかなる精神”が信条の社長が自ら動き出すなんて珍しい。
そんな話題に、現場の空気が一瞬ぴりっと引き締まった。
たしかに、ここ最近、地震の揺れが妙に身近に感じる。
揺れただけで済めばいい。でも、「家」が崩れれば命に関わる。
建物に携わる私たちが、それを一番知っている。
「防災グッズを買う」ことは、一見すると小さな一歩に思える。
けれど、それは災害と向き合う“意識のスイッチ”なのかもしれない。
そしてそのスイッチは、私たちの仕事──「家づくり」にも、確かにつながっている。
このブログでは、私たちが建築に携わる者として、地震と建物の本気の話をしてみたいと思う。
2. 地震が起きたとき、何が一番怖いのか?
地震が起きた瞬間、人はまず「揺れ」に驚く。けれど本当に怖いのは、その揺れによって何が起こるかだ。
・家具が倒れてくる
・天井や壁が崩れる
・火災が発生する
・避難路がふさがる
・家そのものが倒壊する
特に家が倒れるケースは深刻だ。阪神・淡路大震災(1995年)では、死者の8割以上が「家屋の倒壊」による圧死だったとされている。つまり、住んでいる建物そのものが“凶器”になってしまうことがあるのだ。
だからこそ、私たちは「地震に強い建物」と「安全な住空間」を真剣に考えなければならない。
3. 耐震・制震・免震ってなに?ざっくり分かる地震対策
建物の地震対策には、大きく3つの考え方がある。
耐震
建物そのものを“固く強くして”地震の揺れに耐える設計。
木造住宅でも最も一般的な方法。
制震
建物の中に“揺れを吸収する装置”を入れて、揺れを和らげる仕組み。
家具で例えると、クッションのような役割。
免震
建物の下に特殊な装置を置き、地面と建物を“切り離す”ことで、揺れ自体を伝えにくくする構造。
コストはかかるが、揺れが最小限に抑えられる。
こうした仕組みを正しく理解し、住まいに合ったものを選ぶことが命を守る第一歩になる。
4. 木造住宅と地震のリアルな関係
私たちの多くが暮らす「木造住宅」は、地震に弱いと思われがちだ。
だが、それは「古い木造住宅」の話。
近年の建築基準法では、1981年以降に“新耐震基準”が導入されており、それを満たす木造住宅は非常に強い。さらに、構造用合板や筋交い、金物の使い方次第で強度は格段に変わる。
問題は、それ以前に建てられた家や、無理なリフォームをした家だ。
そうした住宅は、見た目はキレイでも、構造が危ういことも多い。
だからこそ、「地震に強い木の家」を作るには、設計段階からの配慮が必要だし、既存住宅は診断や補強がカギになる。
5. 職人の目線から見た「強い家」とは
私たちの会社には、現場を熟知した大工が数多くいる。
彼らの口からよく出る言葉がある。
「見えんところほど、ちゃんと作らなあかん」
例えば、壁の中の筋交いの入れ方、土台と柱の接合部、金物の選定や取り付け精度──こういった“見えない部分”が、家の強さを決める。
工務店の仕事は、ただ図面通りに組み立てることではない。地震の揺れを想定しながら、「ここは念のため補強しとこか」という判断ができるのが、プロの職人だ。
6. 東日本大震災・熊本地震・能登地震から学ぶこと
これまでの地震から学ぶべきことは数えきれない。
東日本大震災(2011年)
津波が大きく取り上げられたが、地震の揺れだけでも相当な被害があった。液状化、インフラ崩壊、広域避難など、都市部の脆さが露呈。
熊本地震(2016年)
特徴は「前震」と「本震」があったこと。耐えたはずの家が、本震で崩壊したケースが多かった。
能登半島地震(2024年)
倒壊の多くが「古い木造住宅」だった。伝統的な町並みが被災し、文化と安全の両立の難しさも浮き彫りになった。
これらの教訓は、設計・施工・暮らし方すべてに生かさなければいけない。
7. 「家具」も危険!?住空間の安全性チェック
家は倒れなくても、中の家具が倒れてくるだけで命を落とすことがある。
特に背の高い収納家具、ガラス扉、テレビなどは要注意。
● 家具は壁に固定されているか
● 寝室や子ども部屋に危険な家具がないか
● 出入口をふさぐ物はないか
● 照明や棚が落下しない設計になっているか
これらはすべて“今からできる防災”だ。
8. 家を建てる前に考えるべき「命を守る設計」
「地震に強い家にしたいんです」と言われたとき、私たちはまず家族構成、土地の性質、ライフスタイルを聞く。
・地盤調査をするかどうか
・平屋か2階建てか
・南向きの窓をどう配置するか
・吹き抜けを設ける場合の構造補強
すべての選択肢には、コストと快適性、そして「安全性」が絡んでくる。
そのバランスをどう取るかが、プロの腕の見せどころだ。
9. 実はコスパ最強?地震に強いリノベーション術
「新築は無理。でも、今の家を少しでも安全にしたい」
そう考える人には「耐震リフォーム」がある。
・壁を抜くときは耐力壁を追加する
・基礎や接合部の補強
・屋根を軽くして重心を下げる
・家具の固定+避難動線の確保
これらは費用対効果が高く、長期的には命を守る投資になる。
10. 防災と建築のこれから──「備える」から「生き延びる」へ
これからの建築は、「災害を想定する」ことが当たり前になる。
気候変動、巨大地震、インフラ停止──どれも現実的なリスクだ。
だからこそ、家を建てる私たちは「備える建築」ではなく、「生き延びる建築」を目指すべきだと思う。
停電時に使えるソーラーパネルやバッテリー
雨水タンクや非常食を備えた収納
家具も含めて「安全設計」された空間づくり
そうした意識が、これからの家づくりには求められている。
11. 終わりに──社長の防災グッズが語る、私たちのこれから
さて、来週の日曜、社員みんなでホームセンターに行って防災グッズをそろえる予定だ。
社長のその一言から始まった小さな行動は、私たちの「安全を考えるきっかけ」になった。
地震は止められない。けれど、「備えること」はできる。
私たちは、家をつくるプロとして、ただ“住める家”ではなく、“生き延びられる家”をつくりたい。
あなたの家は、地震が来ても守ってくれるだろうか?
今一度、立ち止まって考えてみてほしい。
そして、できることからでいい──備えを、始めよう。


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