top of page
検索

未来を支える木の力大阪万博“大屋根リング”をハウスメーカーの視点で読む

  • 2025年4月14日
  • 読了時間: 14分

昨日、万博がはじまりました!

さて、木材でできた大屋根リングについて書いていこうと思います。


1. はじめに 〜大阪万博と大屋根リングのインパクト〜

2025年、大阪湾の人工島・夢洲で開幕した「大阪・関西万博」は、世界160以上の国と地域が参加するグローバルイベントとして、世界の注目を集めています。この万博の目玉のひとつが、会場中央にそびえる巨大な木造建築、「大屋根リング(リング状大屋根)」です。


直径約615メートル、高さ約12メートルのこの木造構造物は、世界最大級の木造建築として2025年の開幕時点でギネス世界記録™にも認定されました。建築業界やデザイン業界だけでなく、私たちハウスメーカーにとっても大きな刺激となる存在です。


なぜならこのリングは、単なる“展示施設の一部”ではなく、「未来の社会の在り方」や「人と自然の共生」といった、私たちが住宅づくりを通して考え続けてきたテーマの象徴でもあるからです。


本記事では、大屋根リングがもたらす建築的・社会的価値に注目し、特にハウスメーカーとしての視点からこの建造物を紐解いていきます。


2. 大屋根リングとは何か? 〜構造と思想を読み解く〜

まず、大屋根リングそのものについて詳しく見ていきましょう。


この巨大な木造リングは、会場の各パビリオンを結ぶ回廊のような構造で、屋根全体には国産木材がふんだんに使われています。その姿はまるで日本の伝統的な“縁側”を現代的に拡張したような印象を与えます。


設計を担当したのは、日本を代表する建築家・藤本壮介氏。彼はこのリングに、ただの「屋根」以上の意味を持たせています。それは、“人と自然を繋ぐ架け橋”であり、“未来社会のシンボル”です。


2-1. 建築スペックの概要

直径:約615m(東京ドーム約5個分)


高さ:約12m


延べ床面積:約60,000㎡


主素材:国産の杉材やヒノキ材


施工協力:日本各地の大工・木工技術者たち


このリングの構造は、複雑な木組み技術と最新の構造解析技術が融合された「現代の匠の技術」とも言えるものです。地震や強風にも耐えられる設計でありながら、見た目には非常に軽やかで開放感があります。


2-2. 木造でつくる理由とは?

これほどの巨大建造物を、あえて木造で造る意義とは何でしょうか。


その背景には、「カーボンニュートラル社会の実現」という万博の根幹テーマが横たわっています。鉄やコンクリートに比べて製造時のCO₂排出が少ない木材は、建築物を通じてカーボンストレージ(炭素固定)にも貢献する素材です。


また、木材は再生可能資源であり、地域材を使うことで日本各地の森林活性化にも繋がります。単なる構造材ではなく、“未来をつくる素材”として木材が再評価されているのです。



3. 木造建築としての価値と挑戦

私たちハウスメーカーにとって、木造建築は長年の主戦場です。しかし、大屋根リングのようなスケールで木造建築を成立させる試みは、まさに“次元の違う挑戦”と言えるでしょう。


一見すると、巨大なリング状の構造はデザイン的なインパクトに目が行きがちですが、その本質は“技術”と“思想”の結晶です。


3-1. 日本の伝統とテクノロジーの融合

大屋根リングは、伝統的な木組みの技術と最新のデジタル設計・加工技術が融合して誕生しました。接合部には釘を使わず、木と木を噛み合わせる「仕口(しぐち)」や「継手(つぎて)」の技法が応用されており、それらが精密に組まれて構造体を成しています。


ここで注目すべきは、「伝統技術の再評価」です。私たち住宅業界においても、近年はプレカットによる大量生産が主流となる中で、こうした“手仕事”の価値をどのように活かすかが問われています。


3-2. スケールの挑戦

住宅規模の木造建築と比較すると、大屋根リングのような巨大スパンの木構造は設計・施工ともに桁違いの難しさを伴います。とくに構造解析においては、木材の強度、乾燥収縮、風荷重、地震荷重など、あらゆる要素を複雑に計算する必要があります。


それにもかかわらず、リング全体に「浮遊感」すら感じさせる軽やかさを実現している点は、まさに構造美の極致。これは、住宅における“心地よさ”や“抜け感”の創出にも通じる設計哲学です。


3-3. 木材という素材の信頼性

長期にわたる耐久性を確保するため、防腐・防蟻処理はもちろん、雨水排水や通気設計にも工夫が凝らされています。これは私たちが日々直面する「木造住宅の弱点」への対応にも大いにヒントを与えてくれます。


4. サステナビリティとカーボンニュートラルへの貢献

大阪万博の根幹テーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」。その中核にあるのが「持続可能性(サステナビリティ)」です。大屋根リングはまさにその思想を“建築”として体現する象徴的な存在といえるでしょう。


4-1. 木材によるカーボンストレージ

木材は光合成によって大気中のCO₂を吸収し、炭素として内部に固定(カーボンストレージ)します。つまり、建物として木材を長期間使うことで、地球温暖化防止に寄与できるということです。


大屋根リングには、数千立方メートルもの国産木材が使われており、それによって数百トン規模のCO₂が長期的に貯蔵されると推計されています。


これは私たちが提供する木造住宅にも応用可能な考え方であり、今後の住宅設計では「どれだけ炭素を固定できるか」が環境性能の新たな指標になっていく可能性があります。


4-2. 地域材の活用と経済循環

大屋根リングに使われた木材の多くは、日本各地の森林から調達された地域材です。これは「地産地消」の考えに基づき、輸送エネルギーの削減とともに、地域の林業支援や雇用創出にも貢献しています。


住宅業界でも、輸入材頼みだった構造材の流れを見直し、地域の森林資源を循環的に活用することが、今後の責務となるでしょう。


4-3. 自然との共生という思想

リングの下には風が通り、木漏れ日が差し込み、人が歩き回る空間があります。そこには冷房も暖房もありませんが、自然との調和が空間の快適性を支えています。


この考え方は、住宅の設計においても非常に重要です。パッシブデザイン、風通しの良さ、軒の出の取り方──すべてに「自然と共に暮らす」という思想が根づいており、それをどこまで現代の家づくりに取り込めるかが、ハウスメーカーとしての技術力の真価が問われるポイントでもあります。




5. ハウスメーカーが注目すべきポイント

大屋根リングの存在は、私たちハウスメーカーにとって“遠い世界の話”ではなく、明日の家づくりに直結するヒントの宝庫です。ここでは、特に実務に直結する5つの注目ポイントをピックアップします。


5-1. 「素材としての木」の再評価

住宅業界では、コストや工期、性能の観点から鉄骨やRCを選択するケースも少なくありませんが、今回の大屋根リングは“木材こそが現代建築の主役にもなりうる”ことを示してくれました。


加工精度の高いプレカットや、耐火・耐震・防蟻技術の進化により、今後の木造住宅はさらに進化していくはずです。


5-2. パッシブデザイン思想の重要性

大屋根リングは、風通し・光の取り込み・日射遮蔽など、いわば「気候との対話」によって快適性を得ています。これは、住宅設計における“パッシブデザイン”の考えそのもの。


エアコンや機械換気に頼らない快適な住まいの実現には、この考え方をいかにプランに落とし込むかがカギになります。


5-3. 地域材の可能性とストーリー性

大屋根リングでは、日本各地から集められた地域材が使われており、設計や施工にはその土地の職人の技も活かされています。このような“地域に根差すストーリー性”は、今後の住宅ブランドづくりにも応用できる要素です。


例えば「◯◯県産の木を使った家」や「地元大工との協業」など、素材の“出自”を語れる家は、他社との差別化にもなります。


5-4. 技術の伝承とクラフトマンシップ

大屋根リングには、伝統工法と最新技術の融合が随所に見られます。私たちもまた、次世代の現場を担う若い大工・職人たちに、“伝えるべき技術”と“デジタルで補完すべき技術”の両面を整理する必要があります。


ハウスメーカーが技術者の育成を怠れば、30年後に“建てられる家”が減るという現実にも向き合わねばなりません。


5-5. 建築の「体験価値」

大屋根リングは、人が中に入り、歩き、風を感じ、木の香りに包まれることで初めて完成する「体験型建築」です。これこそ、近年求められている“体験価値としての住まい”の考え方に通じます。


住宅展示場のモデルハウスにも、“五感に訴える体験設計”が求められており、ただ性能値や図面でアピールするだけの時代は終わりつつあります。


6. 技術的視点:構造、素材、施工手法

ここでは少し専門的に、大屋根リングを支える技術面に焦点を当ててみましょう。住宅と異なる点、共通する点、そして応用できる点を明確にしていきます。


6-1. 構造:軽やかさと剛性の両立

大屋根リングの構造は、いわゆる「格子梁構造」に近く、木材を碁盤目状に組むことで荷重分散と耐震性を確保しています。この手法は、平屋住宅や中庭型住宅の大空間設計にも応用可能です。


特に、構造材を“見せる”デザインと組み合わせることで、デザイン性と構造的信頼性の両立が可能になります。


6-2. 素材:国産木材の耐久性と処理技術

今回用いられたのは主に杉・ヒノキなどの国産材ですが、これらはきちんと処理すれば住宅用途にも十分な耐久性を持ちます。特に、加圧式防腐処理や乾燥処理の技術向上によって、腐朽・白蟻に強い木材を安定供給できる体制も整ってきました。


住宅設計でも「構造材の選び方」は断熱性能や長期優良住宅認定と密接に関わるため、木材の基礎知識は必須です。


6-3. 施工:デジタルと職人技の融合

大屋根リングの施工は、BIM(Building Information Modeling)やCNC加工(コンピュータ制御木工機械)をフル活用しながら、現場では熟練職人による微調整と仕口組み立てが行われました。


この“ハイブリッド施工”は、今後の住宅施工にも波及していくでしょう。工場での高精度プレカットと、現場での手仕事による仕上げ──両方を担えるチーム作りがカギになります。



7. 住まいづくりへの応用可能性 〜大屋根リングからのフィードバック〜

大屋根リングは万博という特殊な舞台のために設計された建築ですが、私たちが日々向き合っている“日常の住まい”に応用可能な要素も数多くあります。


以下では、ハウスメーカーが住宅設計に取り込める5つの具体的な観点を紹介します。


7-1. 外とつながる空間構成

大屋根リングの最大の魅力は、建物でありながら“外”と連続していること。屋根はあるけれど壁がなく、風や光が通り抜ける空間──これは日本家屋における縁側や土間に通じる考え方です。


住宅設計でも「インナーテラス」「通り土間」「中庭」など、屋内外を曖昧につなぐ空間は人気が高く、設計の工夫次第で高い満足度が得られます。大屋根リングはその発展形とも言えます。


7-2. 大屋根のデザインと機能性

リング状の“おおい”は、日射遮蔽と雨除け、そして空間の一体感を生み出す役割を果たしています。住宅においても、深い軒や庇を設けることで、エネルギー効率を高めつつ意匠的にも豊かな表現が可能です。


特に近年の住宅では、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現に向けて、「自然のチカラを使う設計」が重視されており、大屋根の考え方はその方向性と一致します。


7-3. 木を“見せる”インテリア

構造材である木をあえて露出させることで、住まいに“自然素材の温もり”と“安心感”を演出する──これは現代住宅でも根強い人気を誇るスタイルです。


大屋根リングのように、素材そのものの質感を活かした空間づくりは、住まい手の五感に訴える設計手法として非常に有効です。


7-4. 回遊動線と“まち”のような住まい

リングの形状は、回遊性に優れた空間設計を可能にしています。これは住宅でも「回遊動線」の設計に応用できます。


玄関→LDK→水回り→収納→玄関…という循環する動線は、生活ストレスの少ない快適な暮らしを支えます。また、家の中に複数の“居場所”を設けることで、家族がほどよい距離感で共存できる空間にもなります。


7-5. 建築に「物語」を持たせる

大屋根リングには、日本各地の木材、職人、伝統技術、環境思想──さまざまな“物語”が詰まっています。私たちの住宅も同じく、一棟ごとに“物語”を持たせることが、これからの差別化に繋がります。


例えば、施主の出身地の木を使う、思い出の場所の風景を再現する、地元職人とつくる家にする──そうしたストーリーは、住まいへの愛着や暮らしの質を大きく左右します。


8. 地域材の活用と日本の木造文化

大屋根リングのもう一つの大きな意味は、「地域材の力強さ」と「日本の木造文化」の再評価にあります。私たちがこの建築から学ぶべきは、“材料そのものの背景”を読み解き、建築にどう活かすかという視点です。


8-1. 地域材とは何か?

地域材とは、その地域で伐採され、加工された木材のことを指します。国産材の中でも、輸送距離が短いため環境負荷が低く、地元経済への還元効果も高いのが特徴です。


大屋根リングでは、日本全国から地域材が集まり、まさに“木の日本地図”のような建築が実現しました。


8-2. 地域材を使うメリット

環境負荷の軽減:輸送距離の短縮によるCO₂削減


地元経済の活性化:林業・製材・運送業・職人への波及効果


文化の継承:土地ごとの木と職人技の保存


これらは住宅業界でも活用可能です。とくに近年は「地域とのつながり」を大切にしたい施主も増えており、地域材を使った家づくりは共感を得やすいテーマです。


8-3. 木造文化の価値をどう伝えるか

私たちが提供する“木の家”には、単なる「商品価値」ではなく「文化価値」があります。木の香り、肌ざわり、経年変化、再生可能性──それぞれが「人と自然の距離を縮める力」を持っているのです。


大屋根リングは、それを壮大なスケールで表現しています。だからこそ、私たち住宅のプロも、「なぜ木でつくるのか」「木にしかできないことは何か」を、しっかり言語化して発信していく必要があります。



9. 万博後の大屋根リングの未来 〜一過性で終わらせない価値〜

2025年10月13日、大阪・関西万博が幕を閉じると、大屋根リングをはじめとする多くの施設はその役目を終えることになります。しかし、「大屋根リング」は本当に“終わる”のでしょうか?


実は、万博後もその一部または全体の保存・活用を求める声は強く、政府や大阪市も「会場跡地の有効活用」を模索しています。


9-1. リユース・再構築の可能性

木材は分解・再利用がしやすい建材です。大屋根リングで使われた膨大な木材は、住宅や商業施設、公共空間への転用も視野に入れられています。仮に解体されたとしても、その木材が“第2の命”を得る可能性は非常に高い。


これは、「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の考え方そのもの。私たちハウスメーカーが住宅の設計においても、将来的なリユース・解体後の素材の活かし方を意識することが、より重要になる時代です。


9-2. 記憶としての建築

建築は物理的に解体されても、人々の記憶や経験に残ることで“文化”になります。大屋根リングも、訪れた人々の記憶や写真、映像、語りの中に長く残り続けるでしょう。


これもまた、私たちがつくる家に必要な視点です。家は単なる器ではなく、家族の時間や記憶を育む“舞台装置”です。その意味で、住まいの設計にも「記憶に残る空間」を意識していく必要があると、大屋根リングは教えてくれます。


10. まとめとハウスメーカーとしての提言

〜“木の力”と“建築の未来”を信じて〜


大阪・関西万博の大屋根リングは、単なる巨大木造建築ではなく、未来の社会像を象徴する「思想の結晶」でした。そこには、木という素材の持つ可能性、建築の文化的価値、そして技術と伝統の融合が凝縮されています。


私たちハウスメーカーがこの建築から学ぶべきことは、決して少なくありません。


ハウスメーカーへの5つの提言:

「木を使う理由」を語れる設計者になること

 素材の背景や文化的価値を伝える力が、顧客の信頼を生む。


体験としての建築を設計すること

 性能やデザインだけでなく、住まい手の“感情”に届く設計を目指す。


地域とつながる素材選びをすること

 地域材を使った家づくりは、環境配慮とブランディングの両立になる。


伝統とテクノロジーの両輪で施工力を高めること

 職人の技を守りつつ、デジタル技術も取り入れる柔軟性が不可欠。


持続可能性を“住宅の性能”として数値化・見える化すること

 カーボンストレージ、再利用性、エネルギー設計を積極的に提案していく。


大屋根リングが示したのは、「過去から学び、未来に活かす」という建築の本質です。


“建てる”ことがゴールではなく、“建てた後の未来を支える”ことこそ、私たちハウスメーカーの本当の使命。そんな意識を新たにしながら、これからの住宅をつくっていきましょう。


そしていつか、住宅の一棟一棟が“大屋根リング”のように、人々の暮らしと記憶に残り続ける──そんな家づくりを、私たちの手で。


終わりに

大屋根リングを見に行くことは、建築を超えた“未来の暮らし”に触れる旅でもあります。まだの方は、ぜひ実物を体験してみてください。それは、きっとあなたの家づくりにも新しい風を運んでくれるはずです。

 
 
 

最新記事

すべて表示
防災について考える

社長が「防災グッズ買った?」 と突然言い出した。 そういえば私も昨日神戸まつりに行ったばかりで、震災の写真が展示されていた。 当時も実際肌で感じた災害だった。 同じ頃最近の地震ニュースを見て、「そろそろ本気で備えなあかん」と思い立ったらしい。...

 
 
 
ゴールデンウイーク明けと住まいの関係

1. ゴールデンウイーク明けに感じる「暮らしのズレ」 ゴールデンウイーク。それは、日常を一時的に離れてリフレッシュする大切な時間──のはずなのに、明けてみると何となく疲れていたり、生活リズムが乱れていたり、部屋の中が散らかっていたり…そんな「暮らしのズレ」を感じる方は少なく...

 
 
 

コメント


bottom of page